2018年 06月 20日
BEYOND SUMMER イギリスの夏へ 2018/6/20
今日からgallery bauhausで小瀧達郎写真展「BEYOND SUMMER イギリスの夏へ」が始まりました。1979年から撮り始めたイギリス集大成といった内容です。この展覧会のために新たに約50点をプリント。以下は展覧会用のステートメントです。
ーBEYOND SUMMER イギリスの夏へー
はじめてのイギリスの旅からまもなく40年になる。パリで数ヶ月を過ごした後、旅費を節約するためにバスでカレーまで行き、フェリーでドーヴァー海峡を渡った。カルチャー・ショックに加え、言葉が理解できず生活習慣も異なるパリでの生活は、日々この上ないストレスをぼくの中に蓄積させていった。
当時のパリは、日本人に対する認識も現在とずいぶん違っていたし、メトロの車内や道ですれ違う人々の視線も険しかった気がする。それでも毎日パリの街を歩きながら、必死になって写真を撮った。
パリでのそんな日々を過ごした後に訪れたイギリスは、その時のぼくにとってはまるで天国のごとき平穏で安らぎに満ちた国に思えた。街中にはパリにはない緑が溢れ、道行く人々は目が合うと微笑を返してくれた。
イギリスへの旅の目的のひとつは、トニー・レイ・ジョーンズ(注)の写真集を見て憧れていた海辺の街ブライトンに行くことだった。いまになって思うと、ぼくとイギリスとの関わりの原点はまさにここにあるといえる。今回の展示にもブライトンの写真は何点か含まれているが、それ以外にもアイルランドやスコットランドを含め、英国の海辺の街はあちこち旅をして写真におさめてきた。
一階の展示「Journey Through the Past」は過去のイギリスの旅のダイジェスト的な内容になっている。地階の展示「Beyond Summer」は2014年から2017年の夏に撮影した新作である。
ブライトンは近年やや洗練されすぎた気がするが、イギリスの北西部のアイリッシュ海に面したブラックプールにはひと昔前のイギリスの海浜行楽地のレトロ感が漂っていて、とても好きな街だ。忘れられたような海辺の行楽地を舞台にしたレイ・ブラッドベリの短編小説『こびと』は、見世物小屋のこびとや刺青男などが登場するファンタジーだが、昔のブライトンやブラックプールはまさにブラッドベリが描く世界そのものといえる。
展示写真は2ヶ月程かけて、自身で丁寧にプリントしたものです。時間をかけてじっくりと観ていただけたらうれしいです。
2018年6月17日 小瀧達郎
(注)若くして白血病で亡くなったイギリス人写真家
http://www.gallery-bauhaus.com
素敵なモノクロームの作品ですね。窓の外の景色がとても気になる描写で色々と想像します。イギリスには行ったことがありませんが,ライカのカメラを持って一度撮影に行ってみたいと憧れる場所です。