2013年 10月 16日
モノクローム暗室作業
パリの写真展の正式タイトルが「Paris 光の廻廊 2010-2013」に決まりました。写真展の概要はこちらで見られますが、詳細は後日またお知らせします。
プリント作業も佳境に入り、毎日4年分のコンタクト・プリントとにらめっこしては、暗室作業に明けくれています。最近は現像液を一から作るのは面倒なので、市販の現像液に調味料?を加えたり、引き伸ばすネガごとに薬品を変えたりと、いろいろテストを繰り返しています。
この展覧会のために、作家の田中真知さんがすてきな文章を書いてくれたので以下に掲載いたします。
沈黙する意志の光
小瀧達郎が撮影したパリは、その幻想的な作風から、一見すると甘美な憂愁の中にあるノスタルジーの表現のように映るかもしれない。けれども、それは大きなまちがいだ。かれのまなざしが向けられているのは、時の容赦のない流れの中にあって、変わることなく「パリ」という都市空間を支えている謹厳な意志だ。それは洋品店に置かれた古いトルソーや、大聖堂の上から下界を見下ろす怪物像や、使いこまれた階段の手すりや、ベンチにたたずむ老人の背中など、パリの街のあらゆる細部に浸透して、「パリ」を不断に生成させつづけている原型的な生命力のように思われる。「もの」をとおして立ち現れるこの細妙な意志をとらえるには、現実をおおう機能性や饒舌性をぬぐい去り、沈黙する純粋な光を浮かびあがらせてくれる古いライカ・レンズでなければならなかった。かつて小瀧さんとともに「マリ・クレール」誌の黄金期をささえた作家の故・辻邦生もまた、パリの街にそのような揺るぎない意志を見ていた。辻さんが今回の写真展を見ていたら、なにを想うだろうかとつい考えてしまう。
田中真知(作家・翻訳家)
プリント作業も佳境に入り、毎日4年分のコンタクト・プリントとにらめっこしては、暗室作業に明けくれています。最近は現像液を一から作るのは面倒なので、市販の現像液に調味料?を加えたり、引き伸ばすネガごとに薬品を変えたりと、いろいろテストを繰り返しています。
この展覧会のために、作家の田中真知さんがすてきな文章を書いてくれたので以下に掲載いたします。
沈黙する意志の光
小瀧達郎が撮影したパリは、その幻想的な作風から、一見すると甘美な憂愁の中にあるノスタルジーの表現のように映るかもしれない。けれども、それは大きなまちがいだ。かれのまなざしが向けられているのは、時の容赦のない流れの中にあって、変わることなく「パリ」という都市空間を支えている謹厳な意志だ。それは洋品店に置かれた古いトルソーや、大聖堂の上から下界を見下ろす怪物像や、使いこまれた階段の手すりや、ベンチにたたずむ老人の背中など、パリの街のあらゆる細部に浸透して、「パリ」を不断に生成させつづけている原型的な生命力のように思われる。「もの」をとおして立ち現れるこの細妙な意志をとらえるには、現実をおおう機能性や饒舌性をぬぐい去り、沈黙する純粋な光を浮かびあがらせてくれる古いライカ・レンズでなければならなかった。かつて小瀧さんとともに「マリ・クレール」誌の黄金期をささえた作家の故・辻邦生もまた、パリの街にそのような揺るぎない意志を見ていた。辻さんが今回の写真展を見ていたら、なにを想うだろうかとつい考えてしまう。
田中真知(作家・翻訳家)
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八島秀二
at 2013-10-17 07:31
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小瀧さんの「永遠の一瞬をshotする術」を簡潔に品格を携えて紹介していますね。 今回の映像に誘う香り立つ文章ですね。
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tatsuokotaki at 2013-10-17 13:15
文章に負けないように頑張らねば!
by tatsuokotaki
| 2013-10-16 22:58
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Comments(2)