小瀧達郎気紛れ日記


by tatsuokotaki

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温泉紀行━湯宿温泉         2010年1月29日(金)

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群馬県湯宿温泉は、つげ義春の『ゲンセンカン主人』の舞台となった鄙びた温泉宿場町である。作中の「この町はまるで死んだように静かだな」というセリフの通り、いまも時代に取り残されたように時が止まっている。
ぼくが最初に湯宿を訪れたのは2007年の1月のことで、このときのことは以前のブログにも書いた。この頃ウツ症状が激しくて、ひとりであちこち温泉宿を泊り歩いていた。このときは金田屋という、湯宿にしては比較的気の滅入らないレベルの旅館に泊まった。宿の風呂で背中いっぱいに刺青をしたおじさんと仲良くなって、いろいろ話をしたおぼえがある。
『ゲンセンカン主人』のモデルとなった路地のどんづまりにある大滝屋はいまも健在だが、つげさんが泊まった建物は建て替えられ、湯治棟のような部分だけが朽ち果てたような状態で残っている。
湯宿からひと山登った丘の上には旧三国街道の須川宿があって、いまは「匠の里」として観光バスなどもやってくるちいさな観光地となっている。ここにおいしいコーヒー(地方に出かけた時は貴重な存在)を飲ませてくれる店があって、湯宿に来るたびに立ち寄っている。最初に訪れたときにアン・サリーの歌うニール・ヤングの曲「Only love can break your heart」が静かに流れていたのを思いだす。
湯宿は毎年訪れているが、ぼくはつげさんほどうらぶれた宿が好きではないので、法師温泉か四万温泉の積善館に泊まることが多い。つげさんは何度も湯宿を訪れたようだが、湯宿には何か不思議な魅力がある。ぼくも最初は車で通り過ぎていたくらい何もない場所なのだが、ふりかえると毎年湯宿にやって来ている。4つある共同浴場は現在きれいに建て替えられ、熱い湯源泉が掛け流しの温泉は住民でなくとも無料で利用できる。いまどきただで温泉に入れるなんて、湯宿温泉これだけでも貴重な存在といえる。

匠の里の「Mの家」の書棚にあったつげ義春の『貧乏旅行記』をめくりながらコーヒーを飲んだ。
by tatsuokotaki | 2010-01-29 22:48 | Comments(0)

  新しい年に           2010年1月16日(土)

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新しい年がスタートして半月が過ぎようとしている。昨年は懸案だった自分の展覧会もできて、宿題をひとつクリアした気がしています。今年はまた次なるステップに励みたいと思っています。海野弘氏が日経新聞に昨年のギャラリー・トークの話を書いてくれたので転載させていただきます。

『ある雑誌と編集者の思い出』
                                       海野 弘

1980年代から90年代にかけて、『マリ・クレール』(日本版・中央公論社)という雑誌があった。私はそこで物書きとして育った。その時代の思い出を語る機会があった。
JR御茶ノ水駅の近くに写真のギャラリー「バウハウス」がある。そこで開かれている小瀧達郎写真展で、『マリ・クレール』の常連写真家であった小瀧さんを囲んで、写真評論家の飯沢耕太郎さんと私で、ギャラリー・トークをしたのである。そしてこの雑誌の名物編集者であった安原顯の話をしようというので、私はうれしくなって参加したのであった。
今、こうして文章を書いているのも、この安さんのおかげである。彼が亡くなって、自分の夢の企画を聞いてもらう人がいなくなった。いつも、何か思いつくと、夜中に電話して聞いてもらったものだ。
安さんは文芸誌『海』の編集者であった。私も『海』に書かせてもらい、親しくなった。『海』が休刊になった後、彼は『マリ・クレール』をやることになった。その時、私にだれかいい写真家を紹介してほしいといったところ小瀧さんを推薦したのだそうだ。だそうだ、というのは、私はすっかり忘れていて、あとで彼からそうだった、といわれたからだ。
ともかく、小瀧さんは『マリ・クレール』のセンスがぴったりだったので、毎号のように登場していた。写真に困った時は小瀧さん、と彼はいっていた。ちなみに書き手がいない時は私だったらしく、ありとあらゆるテーマを書かされた。
ありがたかったのはマルセル・プルーストを書かせてくれたことだ。1年の約束で終わらず、3年目にさしかかり、「しょうがない。終わるまで書けよ」といってくれて、4年半かかった。
その夜のギャラリー・トークでも、3人とも「雑誌のいい時代だったね」という話になった。今、昔のバック・ナンバーを見ると、写真はゆったりと大きく使われている。ぎっしりと情報がつめこまれたこのごろの雑誌とは対照的である。
80年代はバブルの時代といわれ、広告がいっぱい入った。大判のカラフルなグラフ雑誌が続々と登場した。女性ファッション誌にプルーストを書かせてくれる時代であった。
そして今は、雑誌の冬の時代だ。多くの雑誌が姿を消した。連載して本にまとめるのがむずかしくなっている。1回の分量が短いからだ。私なども、好きなことは書き下ろしで書くしかないと思うようになった。
あの頃は、好きなことを好きなだけ書かせてくれる雑誌があったねえ、という話になった。それに、いい編集者がいた、と私たちは安原顯のことをしのんだ。
なんだか昔はよかった、という思い出話ばかりのようだが、それだけでもなかった。会場に展示されている小瀧さんの写真を見ているうちに、『マリ・クレール』に書いていた自分がもどってくるように感じた。
イギリスのブライトンの浜辺の写真があった。私はふといってみた。
「また一緒に仕事がしたいね」
「いいですね。なにをやりましょうか」
「もう1度プルーストを書きたい。『プルーストの浜辺』というのはどうだろう。あなたの写真で」
「でも出してくれるところがないかもしれません」
それでもその夜は、そんな夢の話をした。


(c)日本経済新聞「プロムナード」より

by tatsuokotaki | 2010-01-16 18:44

菜の花とCNNニュース         2010年1月13日(水)

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那須の農産物直売所で買った菜の花を花瓶に投げ入れておいたら次々と花が咲きはじめ、愛らしくて食べられなくなってしまった。外は風が冷たいけれど、窓辺にはあたたかい日差しが降りそそいでいる。TVではCNNニュースがハイチの大地震を伝えている。
CNNが発信する生々しリアリティーはいったいどこからくるのだろうといつも不思議に思う。不謹慎かもしれないが、それがかなり悲惨なニュースでも、ドラマを見ている以上にドラマチックで、思わず画面に見入ってしまう。
災害を前に報道か救助か、現場にいる人間には永遠について廻るテーマだが、一方で感情を排したある種の野次馬的好奇心が報道には不可欠な要素であることも否めない。
日本のニュースはなぜかリアリティーが欠如していて、すべてが絵空事のように頭上をかすめて去っていくように感じることがある。
海外のホテルで見るニュースが、日本でのそれと比べようもなく身近に感じるのはぼくの錯覚だろうか。


LUMIX DMC-L10 D SUMMILUX 25mm 
by tatsuokotaki | 2010-01-13 22:14

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