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 霧積温泉           2012年1月6日(金)

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        お正月に友人のfacebookを見ていたらみんな温泉に行っている。
        2日から暗室に籠っていたのだけれど、やっと開放されたので群馬
        の山の中の温泉に出かけた。
        今夜の宿は、西条八十の詩「帽子」の舞台となった霧積温泉。
        群馬はさすがに寒い!六角形の浴槽の窓から冷たい月が見えた。
        39度というややぬるめの温泉に入って囲炉裏で食事をした。
        近頃、しばらく温泉に行かないとストレスがたまってくる。これはほ
        とんど温泉中毒かもしれません。

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          母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?
          ええ、夏碓井から霧積へ行くみちで、
          渓谷へ落としたあの麦稈帽子ですよ。
          母さん、あれは好きな帽子でしたよ。
          僕はあのとき、ずいぶんくやしかった。
          だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
          母さん、あのとき、向うから若い薬売が来ましたっけね。
          紺の脚絆に手甲をした。
          そして拾はうとしてずいぶん骨折ってくれましたっけね。
          だけどとうとう駄目だった。
          なにしろ深い渓谷で、それに草が
          背丈ぐらい伸びていたんてすもの。
          母さん、本当にあの帽子どうなったでせう?
          そのとき傍に咲いていた車百合の花は、
          もうとうに枯れちゃつたでせうね。そして、
          秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
          あの帽子の下で毎晩きりぎりすが鳴いたかも知れませんよ。
          母さん、そして、きっと今頃は、--今夜あたりは、
          あの渓間に、静かに雪が降りつもっているでせう。
          昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
          その裏に僕が書いた
          Y・Sという頭叉字を
          埋めるように、静かに、寂しく。

                             西条八十 「帽子」

by tatsuokotaki | 2012-01-06 21:02 | Trackback | Comments(0)

小瀧達郎気紛れ日記

by tatsuokotaki
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